新聞スタンドのオヤジ、あるいは人を信じる力
「にいちゃん、昨日、死にそうな顔して歩いてたな。でもよ、あんな顔じゃ女にモテないぜ。もっとシャキッとして歩かないとな!ははは!!!」
私は苦笑しながら新聞を買う。「じゃあ、行ってきます」といって、地下鉄の階段を駆け足で降りる。電車のドアが閉まる風景が見える。乗り遅れだ。
私が毎朝新聞を買うスタンドのオヤジは、1秒でも時間が惜しい朝に限って話かけてくる。ファンキーなオヤジだ。このオヤジのせいで、私は一体何度電車を逃した事だろう。今日は、病み上がり。電車が遅れた時のダッシュは体にきついのだが・・・。
しかし、このオヤジ、6年にわたる細切れの話題を繋ぎあわせると凄いオヤジなのだ。例えば、「元々は日経新聞社の記者」「ソ連に密航したことがある」「世界の大半の国に行った」「○○という政治家は友達」等。普通に聞いたら、話半分なこうした話題だが、5年以上にわたって、実際、このオヤジと話をしていると、本当にそうなのだろうな。という気がしてくるから不思議なものだ。
なお、そう思わせる理由の一つに、オヤジが、トイレに行ったり、タバコを購入している不在の間に登場する、「お金はここに入れておいてください」ケースがある。これは、名前の通り、セルフサービスでお金と新聞を交換する仕組みなのだが、時々5000円札とかが、このケースの下に挟まれていたりすると人事ながら緊張したりする。
普通なら、「本当かよ?!」と思うオヤジの話も、こういう風に人を心底信用するオヤジだから、(ちょっと色がついてることはあるにしても)本当の事なんだろうな、と私は思ってしまうのだ。そして、人を信じる事が出来る人を私は信じるのだな、と認識する。
私は、ここ数年、毎朝、遅刻の危険と引き換えに、オヤジとのちょっとした会話を楽しむ。「梅雨に入ったね」とかいったニュースはすべてオヤジからだ。いつか、オヤジと酒を飲んでみたいと思っているのだが、なかなかこれが叶わないのが、残念で仕方がない。
![転職、派遣、アルバイトまで!求人メルマガ [en]キャリアニュース](http://columnjob.en-careernews.com/images/en_logo.gif)
