食欲、あるいは職について

三度のメシより○○が好き」という言葉があるが、仕事に関しては、それは危険だ。死んでしまう。まあ、そんな危険を冒す人はいないと思うが、最近私は「食べるために働く」という意識が、実は凄く大事なんじゃないかと思う。

ところで、先日こんなことがあった。

残業が長くなると近くのコンビニに夕食の買出しにいく私達エン・ジャパン。その日も、いつものように買い出しに行った。スパゲティーや紅茶の入った袋を持って信号待ち。赤が青に変わる瞬間をボケ~と眺める私の口から、想像だにしない一言が出た。

「福田、実は俺、俳優になりたかったんだ。劇とか出てさ。」

同僚の福田は、私の突然の意味不明な発言に目を大きくした。(何故突然こいつはそんな告白をするのだ?)福田は、私が俳優になりたかったことなんて今の今まで知らない。それはそうだ。私だってその時初めて知ったのだから。

この一言は彼の「お前ばか?」といういなせな態度であしらわれたのだが、私はこの言葉がどこか気に入った。あまりにもとっぴょうしもない考えだが、私は自分がまだ俳優になる途も残っているということに気づいたのだ。もちろん俳優になる気なんて全然ないのだが、どこか世界が開けた。

転職という行為が特別のことじゃなくなり、最初に入社した会社にずっといつづけることがなくなった今、私達は常に「何をしたいのか?」と問われている。そして、何をして仕事をしていくのかという問題も煎じ詰めれば、何をして食べていくのか、という問題になる。でも、これは逆にいえば、食べていければ、自分の好きなことを仕事にしてよい、ということにもなるのだ。

「何を食べるか。その食べ物を買うお金をどうやって手にしていくのか。」

私はこの問題をよく考える。食(職)欲の秋。